茅渟湾亭

茅渟湾亭は「ちぬわん・てい」と読みます

「コンデジありませんか」「そこになければないですね」

デジタルカメラというものについて書いてみたい。

デジタルカメラとの出会い

約20年前に遡る。

小学生だった当時、母がミノルタDiMAGE Xiという、コンパクトデジタルスチルカメラを買ってきたのが始まりだった。
有効320万画素CCDセンサ、35mm判換算で37-111mmの光学3倍ズーム。

スペックについては当時のネットニュースが詳しい。

ミノルタ、屈曲光学3倍ズームの「DiMAGE Xi」を発表(ITmedia)

この、レンズが飛び出さず真四角なスタイル、2020年代の現代でも通用するデザインだと思う。

DiMAGE Xiは母が買ってきた家電製品だが、実際には主に小学生の私が使うことになった。当時から鉄道が好きだった私が、近所で電車を撮ったり、遠出の際に撮ったり・・・

さらにその写真をパソコンに読み込ませて管理していた。この趣味スタイルこそ、私の鉄道趣味、カメラ趣味、パソコン趣味の原点と言えるかもしれない。

DiMAGE Xiで撮影した、JR神戸線205系

そして次に手にしたのは、OLYMPUSのCAMMEDIA C-730 Ultra Zoomという、光学10倍ズームのデジタルカメラだった。

この製品の販売は上述のDiMAGE Xiとほぼ同時期だが、私は父親が中古で買ったものを貰ったので、入手したのは2007年頃だったと記憶している。

C-730UZは、カメラのスタイルとしてはDiMAGE Xiと真逆で、大きくて、レンズが飛び出て、何より露出設定がP/S/A/Mとマニュアルで設定できる(DiMAGE XiはいわゆるPモードしかなかった)点が大きかった。

当時中学生だった私には、それは目新しくて、無駄に露出をマニュアルにして撮影してみたり、それで失敗写真を量産してみたり……と、ある意味で「カメラに目覚める」きっかけをくれた製品だった。

このとき、露出におけるシャッタースピードと絞りの関係や、ISO感度の関係、ホワイトバランスとはなにか、ということを身をもって学んだ。

C-730 UZで撮影した、湖西線西大津駅(当時)での117系

そうなるとよりよいカメラが欲しくなるのが人のサガ。

C-730UZを手に入れて約1年後の2008年、親からの何かのお祝いなどをつぎ込んで、同じOLYMPUSのSP-570UZという機種を買ってもらった。

今度は光学20倍ズームで、一気に1000万画素である。背面液晶も大きく、何よりSP-570UZの特徴は、レンズ交換のできないコンパクトデジカメながら、レンズ回りに電動のズームリングが付いていることだった。焦点距離を変えるときは、一眼レフよろしくズームリングをグリグリと回す仕組み。これが中学生の私には「それっぽくて」楽しかった。

SP-570UZで撮影した、今は無き旧余部鉄橋を通過する、今は無きキハ181はまかぜ

このSP-570UZ、メインで使っていたのは2008~2011年の約3年間であったが、かなりの枚数をこれで撮影した(と思う)。

その後2011年頃に、またズームリングをグリグリする富士フイルムFinePix HS20EXRという機種を買ってもらい、学生時代が終わるまでメイン機として利用していた。
今度は光学30倍ズームだった。

HS20EXRで撮影した、開業したて?のセントラム

2010年頃のコンデジと、スマートフォン

今思うに、この頃(2010年頃)がコンパクトデジタルスチルカメラという製品ジャンルのピークであったと思う。

記憶媒体の容量単価はどんどん下落するし、カメラの高感度はどんどん実用的になるし、今から思えば各社がコンデジ製品を発売していたので、家電量販店の店頭でも選択肢はよりどりみどりであった。

しかしながら、コンデジの我が世の春は長く続かないのであった。
理由はご存じの通り、スマートフォンの普及と進化である。

2010年のiPhone 4は、裏面照射型CMOSセンサーを手に入れたというものの画素数は500万画素台、また写真の細部もまだ甘く、コンデジ「並」であってコンデジを「超える」製品では無かったと思う。

しかし5年半後、2015年秋に発売されたiPhone 6sは、1200万画素に動画は4K、何よりソフトウェアの進化もあり、光量の少ない夜間などでも十分見るに堪える写真が撮れるようになっていた。

iPhone 4で撮影した三ノ宮駅ホームから。ノイズがすごい

iPhone 6sで撮影した中之島界隈。iPhone 4に比べてノイズも少なく、見れる画像

こうなると、夜景も綺麗に撮れて、そのままSNSにアップロードできるスマートフォンに対して、コンデジのアドバンテージは非常に少なくなっていった。

当時のミラーレス一眼の普及もあり、当時はコンデジも「ハイエンド機種が残る」などと考えられていたが、iPhone 6sから8年半経った今、そのハイエンド機種すら選択肢が少ない有様である。

iPhone 13 miniで撮影した、瀬戸大橋

そりゃー、iPhoneでこんな写真が撮れるなら、コンデジの出番なんて無いですよね・・・

そして2024年、コンデジを探す

試しにヨドバシドットコムで「コンパクトデジタルカメラ ランキング」を見てみる
無い。イメージしていたようなものが本当に全くと言っていいほど、売っていない。

ヨドバシカメラの名誉のために言っておくと、これはヨドバシドットコムの品揃えが悪いとかでは全く無く、本当に市場に無いのである。

そこにあるのは、ハイエンドコンデジ・・・のごく一部の生き残りと、トイコンデジとでも言うべきか、非常にチープなデジタルカメラのみ。
あとはタフな機種、VLog向けの機種・・・などばかりで、メインの5~10倍程度の光学ズームレンズを搭載し、重量200~300g台程度の機種、かつてのメインストリームが、本当に無いのです。

ランキングでは唯一、キヤノンのIXYシリーズから1機種のみが気を吐いている程度・・・

かつての栄光を追って、2010年代の機種を探す

ならば仕方ないので、AmazonジョーシンWebだなんだと探しまくって入手したのが下記の機種。いずれも新品を購入。

  1. SONY Cyber-shot DSC-HX99
  2. OLYMPUS STYLUS XZ-10

DSC-HX99は販路によってはまだ普通に買うこともできる。コンパクトなボディに換算720mm相当までズームできるレンズ、さらにEVF(電子ビューファインダー)まで付いているよくばりセットな機種。記憶媒体メモリースティック マイクロとmicroSDXCというのが玉に瑕。

XZ-10は恐らくもう新品を購入することは困難と思われる機種。光学ズームは換算130mm相当までだけど、望遠端でも開放F2.7という明るいレンズが特長。2013年発売モデルと思えないくらい現役で普通に使える。

XZ-10で撮影した、今は無き千里中央行き

やっぱり、鉄道とか街並みを撮るのだと、光学ズームがほしいシチュエーションもあるので、通勤カバンに忍ばせられるコンデジは貴重な存在なのです。

ところで、ミラーレスは同じ轍を踏むのだろうか

今「デジカメ」と言えば「フルサイズミラーレス」と言っても過言では無い(言い過ぎだと思うが・・・)。猫も杓子もフルサイズミラーレス。かたやM4/3を出しておきながらかたやフルサイズミラーレスに走るメーカもあるくらいなのだから。

ところで、上の文章ではあえて言及しなかったが、私の今のメインカメラはOLYMPUS OM-D E-M5 Mark III。要するにレンズ資産もマイクロフォーサーズ規格、いやもっと言うとOLYMPUSの一眼しか持っていない。

本稿ではOLYMPUSオリンパスと連呼してきたが、今やOLYMPUS社はデジカメを辞めてしまい、OMDS社に生まれ変わってしまった。

今のところは、OMDSもOM-1やOM-5と発売しているが、これが2030年になった頃にも続いているのかは不安が無いと言えば嘘になる(OMDSの方、すみません・・・)。

そもそもそのマイクロフォーサーズ陣営だって、「マイクロ」と付くからにはそうでない――フォーサーズ規格が存在するわけだが、これはミラーレスの普及とともに市場からフェードアウトしてしまった。

しかし今のスマートフォンの普及はすさまじい。次にフェードアウトするのはミラーレス一眼ではないのか?と言われたら、正直絶対に大丈夫だと断じる自信はない。

あるいは、ミラーレスが残ったとしてもそこはフルサイズばかり・・・というオチだって考えつく。そうならないためにも、OMDSやパナにはぜひとも頑張って欲しいです。(そしてユーザは頑張って買おう・・・)

www.four-thirds.org